エコバッグ1袋。
次のお客さんのかごを受け取る。
カゴには缶ビールや食パンが入ってる。袋に入れるとしたら1枚で済むだろう。
「袋はいりますか?」
「はい」
最近資源削減の為、レジ袋が有料に切り替わってレジでは逐一エコバッグを持参していないお客さんに「袋はいりますか?」と確認するようになった。
手際よく対応し、お客さんをレジ横にある自動精算の機械へ流す。
次のお客さんのカゴを受け取る。
今度は商品で一杯にあふれたカゴが二つだった。軽く結ばれたエコバッグが一つ目のカゴに入っていた。しかし、このエコバッグがどのくらいの大きさなのかは分からないがとても1袋に入りきる量ではない。
「袋いりますか?」
商品のバーコードを読みながら確認する。手やカゴにエコバッグを入れ提示してくれれば、カゴに入っているのがエコバッグ1袋で済むだろうという量であれば確認しない場合がある。
返事を待ちつつほぼ確定のレジ袋に片手を伸ばそうとする。
「大丈夫です」
「ぇ」
つい声に出かけた。というか出てた。
しかし、目の前にはカゴ二つ一杯だ。野菜、冷食、スナック菓子にアイス、更に卵だってあった。それも買いますかとばかりに食器やボトルタイプの洗剤だって3つもあった。最低でもエコバッグを含めても4袋に入れるのでやっとだろう。
お客さんには聞こえていないようで特に気にする感じは無かった。そのまま手際よく会計の商品を生産用のカゴに移していく。
少なくとも4分はかかったかもしれない。確かにそれくらいの量だった。出来るだけ丁寧に、しかし出来るだけ早くパズルみたいにカゴに収めていった。流石にお客さんの購入する物なので上に乗せて状態を悪くすることは出来ないのでカゴを3つに分けた。
「レジ袋入りますか?」
念のために自動精算に促す前に確認してみた。本当なら?を3つ付けたいくらいだ。
「大丈夫です」
先ほどとまったく同じ言葉、同じトーンだった。
カゴを3つ流石に置いておけないのでサッカー台(商品を袋に入れる場)に1つずつ丁寧に持って行ってあげた。
気にしないふりをして次のお客さんの対応に回った。
さっきまでの量が嘘みたいに今度のお客さんはすっかすっか。「もっと買えよ。」その金でこちとら稼いでんだよと思った。
「え?」
「すみませんなんでもないです!」
「もっと買えよ。」が声に出ていた。
缶ビール1缶とサラミ3本だけをカゴに移し自動精算に促した。
サッカー台を見ると今のお客さんの前のカゴ二つのお客さんがちょうど袋に移し終えて退店するところだった。
「?」
さっき誘導したサッカー台にはカゴも片付けられ、運んだ分はすでに無くなっていた。缶ビール1缶、サラミ3本だけで片付けられる量ではないはずだ。私の4分くらいはかかってもおかしくない。大量買いしたお客さんの手を見た。
しかし、その人が持ってるのは持参されたエコバッグただその1袋分だけだった。
※この物語はフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。※妄消文庫はアウルが妄想を消化するために(ただの思い付きで)なんとなく企画されたアウルによるのアウルの為のシリーズです。